エネルギー産業の変革期に、「人」を中心に据えて企業価値の向上を実現する

代表取締役社長 社長執行役員
山田 茂
1. 変革の時代で勝ち残る ― 社長就任にあたり ―
変革期に最も重要な要素は「人」
エネルギーの需要と供給を取り巻く環境は今、大きな変化に晒されています。
2021年以降、新型コロナウイルス感染症の収束や地政学リスクの顕在化により資源・エネルギーの需給が逼迫し、エネルギーセキュリティの重要性が見直されていますが、大きな流れとしては地球温暖化による気候変動や生物多様性への影響懸念から、世界規模で脱炭素化が進むことは間違いなく、エネルギー業界は大きな変革期を迎えています。コスモエネルギーグループにおいても、脱炭素化とエネルギーの安定供給の両方を推進する立場として、極めて難しい経営の舵取りが求められています。
私は2023年4月に社長に就任し、変革期を乗り越えるために決意を新たにしています。
私が当社(当時はコスモ石油)に入社したのは、合併で当社が発足してまもない1988年です。営業を始まりに、35年にわたり供給、経営企画などでさまざまな業務に携わってきました。
特に印象に残っていることの1つは供給部門での経験です。同部門では、原油の輸入から精製、販売、物流に至る全体の流れを俯瞰しながら、石油製品の需要と供給を把握し、瞬時に判断して調整することが求められます。この経験が、全体観とスピード感を両立させながら判断することの礎になっていると思います。
もう1つは、2011年に発生した東日本大震災による千葉製油所でのLPGタンク爆発火災です。この火災では、多くの皆さまに多大なるご心配、ご迷惑をおかけしました。当社グループが安全に対して極めて強い思いを持って経営資源を投下するとともに、現場で地道な努力を積み重ねてきた背景には、この火災の教訓があります。
社長就任に際し強く思うのは、当社グループにとって重要な要素は「人」だということです。火災からの復旧の際も、今のような変革期でも、会社が大きく変わろうとする時には多くの困難に直面します。その際、会社・社員を勇気づけられるのはやはり人であり、未来に向けてイノベーションを起こそうと努力を重ねられるのもまた人です。
変革期を迎えたエネルギー業界で、当社グループがさまざまな課題に挑み、勝ち残っていく上で欠かせないのは人に尽きると、あらためて感じています。
安全安定操業を強みとして稼ぐ力が大きく改善
当社グループは、発足以降業績や財務体質の面で厳しい時期が続きましたが、第6次連結中期経営計画(以下、第6次中計)の取り組みを通じ、稼ぐ力を大きく改善できたと考えています。その結果、財務体質も改善し、市場環境変化に耐え得る一定の自己資本の厚みとネットD/Eレシオ1倍台前半を実現しました。
稼ぐ力を改善できた要因の1つは、製油所の安全安定操業を継続し、安定的に供給・販売ができたことです。当社は火災以降、設備投資などのハード面とともに、操業システムや人材育成などのソフト面でも、安全に向けて取り組んできました。
こうした経営努力に加え、現場で真摯に取り組む社員一人ひとりの力が、稼ぐ力の向上を根底で支えています。安全安定操業は一朝一夕では成せず、火災の教訓を胸に積み重ねてきたものであり、当社グループの大きな強みであると自負しています。今後それを錆びつかせることなく、より磨きをかけていきたいと考えています。