特別対談:コスモのDX
Vision 2030に向け、
データと人が牽引する
コスモのDXの
新たなステージ
常務執行役員 CDO コーポレートDX戦略部、
コーポレートコミュニケーション部、IT推進部担当
ルゾンカ 典子
Cognite AS創業者 John Markus Lervik氏
変革期におけるコスモのDX
- ルゾンカ
- 当社グループを取り巻く環境は急速に変化しています。当社の中長期ビジョンであるVision 2030には3つの大きな社会的変化があり、1つ目は石油需要の減少です。需要が減少する中で、石油事業の継続と次世代エネルギーの開発を模索しなくてはなりません。2つ目は、少子高齢化により現場で働く人が減少しており、デジタルツールを活用して効率化を図る必要があります。そして3つ目は、カーボンニュートラルの実現です。
- Lervik氏
- 世界では、エネルギーセキュリティと安価なエネルギーへのアクセス確保の両立が重視されつつあります。また、顕在化する人口構造の変化を受けて自動化の重要性が高まっており、社会全体が大きな変化の中にあります。これらの変化の中でデジタルの取り組みは、戦略と実行の両面で重要な要素となっており、AIは変革をさらに加速させています。
- ルゾンカ
- 当社の収益力確保の鍵は、製油所の高稼働・高効率操業です。この実現に向けて、石油精製に関するデータの統合とコンテキスト化の基盤としてCognite Data Fusion®(以下、CDF)を導入しました。従来、各部門が保有していたデータを一元化し、課題を可視化、予測することで、生産性・効率性・安全性の向上を実現しています。
- Lervik氏
- おっしゃるとおり、CDFの導入で、社員はより協調的で効率的な働き方を実現できます。さらに、石油精製のバリューチェーン全体を統合し仮想空間にモデル化(デジタル・ツイン)することで、業務フローの自動化 、いわゆる生成AIを適用することができるようになりました。これにより、一部のデータサイエンティストだけでなく、すべての社員がデータにアクセスでき、ワークフローの自動化にも活用できます。
また、工場におけるDXの取り組みにおいては事業価値に焦点を当てることが重要ですが、世界中の取り組みの多くは、ユースケース数の最大化に注力しており、複数の工場間の連携が図られていません。Cogniteと貴社は、事業全体の目標を策定した上で、事業横断的なソリューションやユースケースを体系的なプログラムとして展開しています。それが投資リターンの大幅な向上につながります。世界の企業においても、貴社を参考に同じアプローチを採用する動きがあります。
DXの取り組みと成果
- ルゾンカ
- 私たちは2022年から、データ統合基盤の構築プロジェクトを立ち上げ、データのオーケストレーション(全体最適化)とコンテキスト化に関する議論を重ねました。初期の段階で、AIを活用しながら製油所内の多数のデータおよびその関係性の整理を進められたことで、現場の社員から好意的に受け入れてもらうことができました。現在は、すべての運用データをCDFに集約するよう進めており、これにより社員はファイルやデータを探すために費やしていた時間を7~8割削減し、より高度な検討や意思決定に時間を割けるようになりました。また、製油所の現場写真も集約することで、バーチャルリアリティ(VR)環境を構築し、計器室やオフィスにいながら現場の環境と必要なデータを同時に確認することも可能です。
- Lervik氏
- 私は、DXの取り組みを戦略や事業価値と合致させることが最も重要であると考えています。また、貴社のように、製油所をよく知るメンバーが中心となって強力なリーダーシップを発揮することは、異なる部門やシステムのデータを一元化し、強固で将来性のある基盤を構築するために欠かせません。
- ルゾンカ
- まさにその通りで、社内のIT部門、現場、マネジメントの間の密接なコミュニケーションが成果の鍵となっています。
これまでのDXの取り組みにより、製油所で働く社員の自信とモチベーションを向上させることができました。データが統合、文脈化され、問題が可視化されるようになったことで、社員はより積極的に業務に取り組んでくれています。
- Lervik氏
- 貴社の社員やチームが持つエネルギーには本当に驚いています。DXに自律的に取り組む非常に強い文化が生まれており、変革の速度はそれぞれのユースケースの想定をはるかに上回るものとなっています。
- ルゾンカ
- 当社は、データ統合基盤の構築により、ITの開発・維持コストを中心にすでに10億円規模の削減効果を創出しています。今後も、トラブルによる設備の停止期間短縮、補修部品の在庫適正化、機能集約などを期待しています。また、現在の運用は保全領域が中心ですが、運転や建設領域、そしてサプライチェーン全体に広げることで、さらにコスト削減が進む可能性があります。
- Lervik氏
- データ統合とAIの活用は、バリューチェーン全体での最適化に向けた意思決定の向上に寄与します。物理的なシミュレーションにデータとAIを組み合わせることで、一般的にはメンテナンスと信頼性の面で約10~15%のコストが削減できることに加えて、歩留まりの改善を含む生産性の改善も期待できます。この事例からも明らかなように、強い企業文化と優秀な人材の価値を過少評価してはなりません。この2つはより革新的なアイデアを生み出し、優秀な人材を惹きつけることにつながります。私がともに働く大企業のCEOも、企業のサステナビリティの観点から、人材を惹きつける企業文化は重要な無形資産だと語っていました。
- ルゾンカ
- 私も企業文化の大切さを日々感じています。実際、DXの取り組みをアピールし始めてから、当社にはより多くの優れた人材が集まるようになりました。これまで話してきたとおり、当社の競争優位性は企業文化にあります。その企業文化を具現化し、プロジェクトを成功に導いているのはまさに「人」です。当社はDX推進にあたり、重要な要素(Cosmo’s 5C)を定めています。社員が現状の課題を機会と捉え、プロジェクトチームとして一体となって挑戦する。チーム内やIT部門と対話を重ねながら密接に連携し、トップマネジメントを含めてこだわりを持って変化を起こす。トップダウンとボトムアップの両方が機能することが必要であり、これらがDXを成功させるための重要なポイントです。さらに、深い見識を持ったパートナーとの連携がなければ、スピード感を持って取り組むことはできません。その一例がRCoEです。プロジェクトチームが主導して、CDF導入企業のユースケースを活用し、2024年度にコスモ石油の千葉製油所に導入しました。RCoEの導入により保全機能を集約し、1つの製油所にいながら他の製油所のデータを横断的に把握することが可能となり、予防保全の強化につなげられました。
デジタルプラント分野における将来の展望
- ルゾンカ
- 日本の労働人口が減少し高齢化が進む中では、蓄積した知識やノウハウを維持・継承していくことが最も重要です。そのためには、生成AIのさらなる活用に加えて、次世代エネルギー分野におけるデジタルプラントの構築も必要です。SAFやCCSなどは、プラントの検討段階からデジタル化を図り仮想空間上にモデリングすることで、コミュニケーション面において従来と比べて優位性を大いに発揮します。
- Lervik氏
- Cogniteには2つの重要な領域があります。1つ目は、産業データやAIを活用しワークフローと運用の自律化をめざすこと、2つ目は、バリューチェーンのより大きな範囲を統合することです。設備や工場だけでなく、プロジェクトから運用までを統合し、それをAIがサポートします。私たちは、産業AIの分野で多くの革新的なサービスを提供し、業界をリードしています。しかし、継続的なイノベーションと改善の実現のためには、貴社をはじめとした世界のリーディングカンパニーとのパートナーシップが不可欠です。貴社は、デジタルプラントの分野でリーダーとして変化を牽引する戦略的な立場を確立しています。
- ルゾンカ
- 私たちがめざすのは、DXで世界をリードするトップとなることです。コスモのDX1.0で、基盤固めのために多くのことに取り組みました。DX2.0ではトップをめざし、今後3年間で大きなビジネスインパクトを実現します。そのために重要なのは社員一人ひとりがDXで情熱と自信を持てることであり、これが直面する課題を解決する鍵となります。私たちは、世界に示すべき成果を成し遂げていく決意を持って、DXを推進していきます。