COSMO

生物多様性への取り組み

自然資本・生物多様性の保全に関する考え方

コスモエネルギーグループは、石油製品の開発や提供に取り組む一方で、再生可能エネルギーの導入や生物多様性の保全、自然資本の持続的利用など、かけがえのない地球環境を次の世代へ残すためのさまざまな活動に力を入れています。

当社グループ理念「私たちは、地球と人間と社会の調和と共生を図り、無限に広がる未来に向けての持続的発展をめざします。」および、サステナビリティの基本的な考え方である「地球環境との調和と共生」の実現に向け、「地球温暖化対策の取り組み」「環境負荷の最小化」「水環境の保全」「土壌環境対応の徹底」に取り組むことを、企業行動指針に示しています。また、環境と調和した事業活動の推進について環境方針を制定しています。

 

当社グループの環境方針

 

環境方針において、「自然資本・生物多様性の保全に関する基本的な考え方」を定めており、この方針のもと、環境保全の推進、資源の有効利用を目的とした生物多様性の保全と改善、自然資本の持続的利用に取り組んでいます。

 

【コスモエネルギーグループ環境方針より抜粋】

3. 環境保全の推進

当社グループは、限られた資源を取り扱う企業グループであることを自覚し、水、土壌および大気等の環境および生物多様性の保全と改善に努めます。

 

4. 資源の有効利用

当社グループは、事業活動のすべての段階において、水やエネルギー等の資源、廃棄物の削減、再利用および再資源化(リサイクル)に取り組み、資源の有効利用を図ります。

 

7. コミュニケーションと教育

当社グループは、本方針をすべての役員、従業員および取引先をはじめとするステークホルダーに周知し、当社グループすべての会社における事業活動に組み込まれるよう、自らの役員と従業員に対し、適切な教育を適宜実施します。

 

8. ステークホルダーとの対話

当社グループは、関連するステークホルダーと対話や協議を行い、環境における潜在および実際の影響に対して対応を行います。

 

これまでも、当社グループは気候変動対策、汚染防止・化学物質管理、資源循環・省資源などの環境負荷低減活動により、自然環境に影響を与える要因の低減を進めてきました。

 

これらの取り組みを一層推進するため、経団連生物多様性宣言イニシアチブおよび生物多様性のための30by30アライアンスに参加し、事業活動のあらゆる分野で生態系の保全や生物多様性に配慮した取り組みを進めています。

また、TNFDフォーラムに参加し、これまでの活動をTNFDのフレームワークに照らし合わせて整理し開示を進めるとともに、バリューチェーン全体での自然資本および生物多様性に関するリスクや機会を適切に評価することで、生物多様性を含む自然環境の保全に取り組んでいます。

 

外部団体との連携の詳細は、「賛同・支持するイニシアチブ、参画団体」をご参照ください。

経団連生物多様性宣言イニシアチブ

生物多様性のための30by30アライアンスへの参加

TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)フォーラムへの参画

TNFD(自然資本関連財務情報開示タスクフォース)への対応

TNFDによる提言は、自然関連の依存と影響に関するリスクと機会が、自社の事業戦略、財務計画等に与える影響についての説明を求めています。合わせて、これらの評価や管理に必要な指標についても、開示を求めています。

 

当社グループでは、TNFDへの対応として、2023年9月に公表されたTNFDの提言v1.0に基づき、事業と自然との関係性を把握するとともに、事業影響の試行的なリスク評価・分析を行いました。

TNFD が設定する自然関連の重要課題、事業拠点(地域性)、上・下流のバリューチェーンを考慮した評価および管理に必要な指標について、既存の環境データを元に、TNFDが推奨するLEAPアプローチ(自然関連課題を評価・管理するための評価手法)に沿って、試行的に自然関連の依存と影響のリスク評価を実施しました。

自然関連課題に関するガバナンス

取締役会による監視(監督)体制と経営者の役割

当社は、サステナビリティ推進部担当役員を委員長とする「サステナビリティ戦略委員会」を開催し、自然関連課題を含む重要な業務や方針に関する事項の審議を行っています。グループ全体に大きな影響があると判断された事項については、経営執行会議および取締役会に付議・報告することで、取締役会の監督が適切に図られる体制としています。

 

サステナビリティ戦略委員会での議題や取締役会への報告については、「サステナブル経営の推進体制」をご参照ください。

サステナブル経営の推進体制

ステークホルダーに関するガバナンス

当社グループは、自然との共生を図るうえで、先住民族や地域住民など、その土地の自然破壊や環境汚染等による負の影響を受ける方々とのエンゲージメントが不可欠であると認識しており、自然関連のリスクと機会の分析において重要なテーマの一つとしています。

■先住民族や地域住民などの人権に関する考え方・取り組み

 

当社グループは、「先住民族の土地・権利の尊重」を当社の事業活動が影響力を持つ重要な人権課題の一つと捉え、人権方針に明記しています。また、人権デュー・ディリジェンスにおいては 「先住民族の土地・権利の尊重」についての顕在的・潜在的リスク、および管理体制の評価を行っており、必要に応じて是正措置を検討するプロセスを持っています。

 

詳細は、「人権に関する考え方」をご参照ください。

人権に関する考え方

■サプライチェーンにおける考え方・取り組み

 

当社グループは、「サステナブル調達方針」に基づき、サプライチェーンに対する具体的な取り組み内容として、「公正取引・倫理」「人権・労働」「防災・安全衛生」「環境の保全」「品質・製品安全性」「情報セキュリティ」「社会貢献」「事業継続計画」「サプライヤーの管理」の9つの項目にまとめた「サステナブル調達ガイドライン」を作成しました。

 

本ガイドラインの「環境の保全」においては、生物多様性に関する取り組みに言及し、取引先(サプライヤー)の皆様に対し、本内容についての理解と賛同を要請するとともに、本ガイドラインに準拠した取り組みを求めています。

 


 

詳細は、「サプライチェーンマネジメント/サステナブル調達」をご参照ください。

サプライチェーンマネジメント/サステナブル調達

■管理・報告体制

 

生物多様性に関するリスク評価結果や、人権デュー・ディリジェンスの実施結果、サステナブル調達ガイドラインに基づくサプライヤーの評価結果はサステナビリティ戦略委員会に報告され、重要性の高い情報については経営執行会議・取締役会へも報告されます。

リスクと影響の管理

自然関連の依存と影響に関するリスクと機会の特定および評価プロセス

■評価プロセス

 

当社グループでは、自然に関する事業のリスクと機会を以下のプロセスで評価しました。

はじめに、ENCORE※1の情報による自然への依存や影響の度合い、リスクを把握したのち、関連するリスクが顕在化した外部事例の調査を実施しました。この調査結果に基づき、重要課題を決定しました。

続いて、IBAT※2等のツールを用いて各課題に関するバリューチェーン上の優先地域※3と、それら地域ごとの重要課題を特定し、最後に優先地域における対応策の実施状況を整理しました。

評価プロセス

※1 ENCORE(Exploring Natural Capital Opportunities, Risks and Exposures):企業の自然への影響や依存度の大きさを把握するためのリスク評価ツール

※2 IBAT:国連環境計画(UNEP)等が参加する生物多様性プロジェクト「IBAT Alliance」で開発されたデータベース

※3 優先地域:TNFDが定義する「要注意地域」に相当する場所、ハイリスク地域

自然関連リスクと機会の管理プロセス、全社的なリスク管理

■リスクマネジメント

 

当社グループは「グループリスクマネジメントの強化」をマテリアリティの一つと位置付け、事業活動を通じて発生する一切のリスクを把握し、様々なリスクを適切に管理し損失の極小化を図る体制を整備し、計画・実践・評価・是正措置のサイクルを通じてリスクマネジメントの充実に努めています。

■管理体制とプロセス

 

当社グループのリスクマネジメントについては、「リスク管理」をご参照ください。

リスク管理

自然関連のリスクと機会のビジネスへの影響

重要な自然関連リスクと機会

■自社の事業活動と自然(依存と影響)との関係性の把握

 

TNFD対応にあたり、当社グループの石油開発事業、石油事業、石油化学事業、電気事業、再生可能エネルギー事業における自然関連のリスクと機会をスクリーニングしました。自然関連のリスク評価ツール(ENCORE)を用いて、当社関連事業にとって重要と考えられる自然関連の依存と影響について自然関連テーマごとに評価し、ヒートマップを作成しました。

自然関連の依存と影響のヒートマップ
 

自然関連の依存と影響のヒートマップ

 ※数値は、ENCOREのリスク項目の5段階リスクレベルを数値化し、項目ごとに加点したもので数値が大きいほど影響度が高いことを示しています。

 

この結果を踏まえ、TNFDへの初期対応としては、事業規模(売上規模)の大きい石油開発事業、石油(精製・貯蔵)事業、石油化学事業をLEAPアプローチに沿った分析対象に選定しました。

■自然関連の重要課題選定

 

重要課題を具体化するにあたり、ENCOREを用いた依存と影響の評価に加え、新たな規制の動きや企業に対する自然影響の批判など、バリューチェーン上の事業リスクの事例を調査しました。また、関連する自然関連テーマとバリューチェーンとの関係性を整理しました。

 

これらの調査・分析の結果を踏まえ、ENCOREによる自然関連リスクの分析結果を縦軸「ステークホルダーの関心」で評価、当社におけるリスク重要度評価結果を横軸「自社事業との関係性」で評価し、ここに「先住民族・地域住民の権利」をテーマに加えて、自然関連リスクをマテリアリティマップに整理しました。

このマテリアリティマップにより、当社グループにおける自然関連の重要課題を「気候変動」「周辺生態系」「水質汚染」「天然資源の採取・枯渇」「土地利用・開発」「土壌汚染」の6項目に特定し、地域分析を実施しました。

自然関連のマテリアリティマップ

自然関連のマテリアリティマップ

重要課題の地域性分析

■重要課題に関する事業リスク

 

当社グループにおける自然関連の重要課題への対応策を検討するため、重要課題に関連するリスクの発生可能性が高いバリューチェーン上の位置から対象拠点を特定し、その地域におけるリスク評価を実施しました。

重要課題の分析においては、特に原油・石油の漏洩事故による事業リスクのインパクトが大きいと想定されるため、「直接操業を行う主要な拠点」に対して、原油漏洩を想定した地域性分析を実施しました。

なお、「気候変動」、「天然資源採取・枯渇」については地域差が発生しないこと、淡水利用が少ないことから地域性分析の対象外としました。

バリューチェーンと自然の重要課題と事業リスクの状況

 

バリューチェーンと自然の重要課題と事業リスクの状況

■重要課題に関する優先地域の特定

 

原油・石油漏洩を想定した影響について、当社の主要な操業地である海上油田においては200km内、国内沿岸域の事業所は30km内の範囲で、直接操業拠点の位置情報から生物多様性上の重要地域の確認を行いました。

 

<沿岸域および海上の拠点>

生物多様性リスク測定ツールIBAT、海洋生物の生息分布ツールOcean+ Habitat※4を用いて、生物多様性リスクを評価し、特に自然影響度合いが高いとされる優先地域分析を行いました。その結果、アブダビ首長国沖、北海道、千葉県、三重県、大阪府に位置する6拠点について、周辺に生物多様性上の重要エリアに含まれることが分かりました。

重要課題に関する優先地域の特定

※4 Ocean+ Habitats:世界中の海洋生息地の健全性、分布、変化に関する情報、海洋生態系の保全と修復に役立つ実用的なデータを提供するプロバイダ

<地域性分析のイメージ(IBAT)>

 


<内陸域の拠点>

生物多様性リスク測定ツールIBAT、水リスクの評価ツールWater Risk Filter※5を用いて、直接操業拠点のうち、生物多様性上の重要地域や周辺の水質汚染レベル等の情報から自然関連の重要課題を評価し、優先地域の特定を行いました。

その結果、内陸域の拠点には周辺に生物多様性上の重要エリアに含まれる拠点がないことが判明しました。

 

 

内陸域の拠点

※5 Water Risk Filter:WWF(世界自然保護基金)とドイツ企業が開発した各拠点の地域の水リスクを評価するツール

以上の結果から、アブダビ首長国沖と国内5拠点の計6拠点について、生物多様性・水質汚染・土壌汚染、サンゴ・マングローブ生息地における優先地域が存在するため、優先地域と特定しました。

バリューチェーンの地域性分析による評価

 

バリューチェーンの地域性分析による評価

※ KBA(Key Biodiversity Area):生物多様性保全の鍵となる重要な地域

■各拠点において配慮が必要な生態系サービスや自然資本の特定

 

影響度の高い操業地の選定

当社の事業活動が自然資本に与える具体的な影響や、事業活動を行う上で考慮すべき自然の依存の状況について把握するために、上記で特定した「優先地域」のうち、特に配慮が必要となる内陸域の拠点について、机上分析による評価を行いました。なお、評価については以下の方法で実施いたしました。

<対象拠点の選定条件>

・ENCOREによる事業セクター分析において、自然への依存や影響が大きいセクターを含む事業拠点であること

・当社における事業規模が大きいセクターの事業を営み、かつ当社を代表する操業地であること

<選定結果>

千葉製油所(石油精製)、千葉工場(石油化学)

 

操業地と関連のある生態系サービスや自然資本の特定

影響度の高い操業地において関連がある生態系サービスと自然資本を特定するために、ENCOREの結果と合わせて、自然関連専門家による地域固有の自然の特徴を含めて評価を行いました。その結果、選定拠点において配慮が必要となる生態系サービスや自然資本を特定しました。

依存の可能性がある生態系サービス
No 自然資本 主な生態系サービス 具体的な関係性 関連する場所
1 水流調節 【土地利用(工場操業)】
操業地周辺の水流調節や土壌の保持といった生態系サービスが保たれていることにより、大雨などの水害が発生の抑止につながっている可能性があります。
拠点と隣接する養老川流域
土壌 土壌の保持
2 生息生物 地域気候調節 【製造】
操業地周辺の植生は製造現場からの騒音を軽減したり、製造現場から発生する臭気などのストレス源の影響を軽減する効果が見込まれています。
拠点内の緑地を含めた拠点周辺の自然環境一帯
騒音や臭気軽減
3 水の浄化 【廃棄】
石油精製時に発生する汚染物質の希釈は、水や空気の浄化といった生態系サービスに依存している可能性があります。
拠点と隣接する養老川流域や東京湾を含めた拠点周辺の自然環境一帯
大気 大気及び生態系による希釈
影響の可能性がある自然資本
No 自然資本 影響要因 具体的な関係性 関連する場所
1 生息生物 妨害(光、騒音) 【工場操業】
工場操業から発生する光や騒音が、地域に生息する生物に影響を与えている可能性があります。
拠点内の緑地を含めた拠点周辺の自然環境一帯
2 生息生物 水質汚濁
土壌汚染
【廃棄】
製油所や工場からの排水により、周辺自然環境において化学物質による水質汚濁や栄養塩類による富栄養化が発生した場合、地域の水や生物、土壌などに変化を生じせせる可能性がある。
拠点と隣接する養老川流域
東京湾
土壌

他操業地への展開

上記で特定した配慮が必要となる生態系サービスや自然資本は、千葉製油所と千葉工場と同じ事業を行っている他の操業地でも同様に配慮すべき項目であると言えます。そこで、千葉製油所と千葉工場を含め、他の操業地における配慮が必要な生態系サービスや自然資本に関連する場所・生息生物について整理しました。

拠点 関連する場所 代表的な生物の利用状況
千葉製油所
千葉工場
(千葉県市原市)
東京湾 東京湾に飛来するスズガモ、ダイゼン、キョウジョシギ、ハマシギ、ミユビシギ、キアシシギ、チュウシャクシギ等といった鳥類*1
養老川 養老川河口域干潟に生息する、絶滅危惧種や希少種の生息が多数確認され多様性が高いとされる底生動物*2
四日市製油所
四日市工場
(三重県四日市市)
伊勢湾 伊勢湾奥部の庄内川、新川、日光川の3河川が合流する河口部に位置する藤前干潟に飛来するダイゼン、ハマシギ、ケリ、シロチドリ、メダイチドリといった鳥類*2
鈴鹿川 鈴鹿川河口周辺を中継地として利用するシギ・チドリ類といった鳥類*2
堺製油所
(大阪府堺市)
大阪工場
(大阪府大阪市)
大阪湾 淀川河口の干潟を利用するヤマトシジミといった底生動物や大阪南港野鳥公園を渡来地として利用するシギ・チドリ類といった鳥類*2
大阪湾を産卵場所として利用するイシガレイ、マコガレイ、ヒラメ、ガサミ、クルマエビ、ネズミゴチ、スズキ、コノシロといった魚類*2
下津工場
(和歌山県海南市)
下津港 下津湾に生息する魚類
松山工場
(愛媛県松山市)
重信川 重信川河口干潟に生息する多様度の高い底生動物や、渡来地として利用するシギ・チドリ類といった鳥類*2

*1:日本野鳥の会 https://www.wbsj.org/

*2:環境省 https://www.env.go.jp/nature/biodic/kaiyo-hozen/kaiiki/index.html

 

操業地における自然関連リスクの想定シナリオ

上記の結果から想定されるリスクや機会のシナリオを以下にとりまとめました。

リスクの種類 自然関連リスクの想定シナリオ
物理的
リスク
急性リスク 洪水等の自社以外の外的要因によって地域全体の自然資本の劣化損失が引き起こされる可能性がある
事故による水や土壌への汚染物質の漏洩の影響により地域全体の自然資本の劣化損失が引き起こされる可能性がある
慢性リスク 累積的な水や土壌への汚染物質の漏洩の影響により地域全体の自然資本の劣化損失が引き起こされる可能性がある
移行リスク 政策リスク 水質保全、取水、汚染に関する規制、条例等の強化
環境低減負荷原材料の採用義務化、有害物質に対する規制強化
市場リスク 効率的な新技術に置き換わることで現状の価値が低下し、企業の市場価値は影響を受ける
技術リスク 資源利用の高効率化に向けた設備や機械の導入コスト上昇
評判リスク 周辺環境の劣化による評判、訴訟リスク、不買運動
賠償責任リスク 油漏洩等の汚染に対する損害賠償
機会の種類 自然関連機会の想定シナリオ
企業の
パフォーマンス
・水質管理、油漏洩対策等の技術分野における新規事業開拓
・再エネ事業拡大促進によるリスク軽減
・リスク回避、対応策の開示により世間の認識を良い方向に変化させる
持続可能性
パフォーマンス
・リスクを回避した操業を進めることで地域の自然資本の持続的な利用ができる
・当社および周辺関係者の意識向上により、地域の自然環境全体が保護される

対応策の検討

■重要課題の対応策

 

優先地域として特定した6拠点においては、事業継続上、社会的影響が大きいと想定される原油漏洩による自然影響のリスクについて、これまでの事故発生時の影響低減に関する対策や漏洩防止策など、現段階で様々な対策が講じられていることを確認しました。

今後、操業や周辺環境に変化が生じた場合、必要に応じて追加の対応策を検討します。

重要課題の対応策

■優先地域に対する個別の対策

 

各拠点で取られている自然関連リスクに対し、効果的な既往対策は次の通りです。

・都道府県の上乗せ基準への準拠

・PRTR法対象物質の排出移動量の把握

・規制物質管理、油漏洩対策等に関連する設備点検

・LED電灯への切り替え

・騒音規制法に則った騒音対策の実施

■再生可能エネルギー事業への対策

 

再生可能エネルギー事業について、当社グループで風力発電事業を行うコスモエコパワーでは、法令に基づき、事業実施前段階で環境アセスメントを実施し、運転開始後は、環境アセスメント結果の事後調査や環境管理を徹底して行っています。

このことから、自然への影響リスクが抑制されていると考えられますが、必要に応じて、地域分析の検討を行い、事業影響の分析の範囲を拡大していきます。

指標と目標

定量指標

当社グループでは、 「気候変動」を自然関連課題においても重要課題として認識しており、TCFDに関するページにて、指標を集約して開示しています。

 

詳細は、「気候変動への対応(TCFD提言への対応)」の指標と目標をご参照ください。
気候変動への対応(TCFD提言への対応)

■TNFDグローバル中核開示指標

 

TNFDでは、自然への依存と影響に関する9つの指標と、自然関連のリスクと機会に関する5つの指標の合計14の指標がグローバル中核開示指標として選定され、これらの指標が報告されることを推奨しています。

依存と影響のグローバル中核開示指標に関する当社の開示状況は次の通りです。

 

依存と影響に関するグローバル中核開示指標

 

依存と影響に関するグローバル中核開示指標

開示が困難な指標については、データの収集やより詳細な分析を実施することで開示の拡充を図る予定です。併せて、リスクと機会に関するグローバル中核開示指標についても、今後の調査で開示の検討を進めてまいります。

 

化学物質の管理、排水量、排水汚濁負荷量、大気汚染負荷量等については、「環境負荷低減への取り組み」を、実績値については、「ESGデータ集」の該当項目をご参照ください。

環境負荷低減への取り組み

ESGデータ集

定量目標

■国際的な目標への取り組み

 

当社は、「経団連生物多様性宣言・行動指針」への賛同を表明し、「経団連生物多様性宣言・行動指針」が掲げる企業が果たす行動指針9項目を参考に活動を推進しています。

また、2023年10月にTNFDフォーラムへ、2023年11月に環境省が主導する「生物多様性のための30by30アライアンス」に参加しました。

 

「30by30」とは、2030年までに地球の陸地と海洋の30%以上を保護地域として効果的に保全するという目標で、生物多様性の損失を食い止め、自然をプラスに増やす「ネイチャーポジティブ」に向けた取りくみです。本アライアンスへの参加を通じ、30by30目標達成に貢献すべく、今後も生物多様性・自然資本の保全の取り組みをより一層推進していきます。

 

TNFDのグローバル中核開示指標に沿った指標および目標の設定についても、検討を進めていきます。

産油国での生物多様性の保全活動

コスモエネルギー開発では、環境保護と天然資源の持続可能な利用の促進に、継続的に取り組んでいます。

 

コスモエネルギー開発のグループ会社であるアブダビ石油が操業するムバラス島は、非常に美しい海に囲まれた地域で、特に環境への配慮が求められています。海洋保護区内で働くことの責任を理解し、生態系とそれに依存する野生生物を保護するために、効果的な管理と監視プログラムを実施しています。

 

原油生産の現場であるムバラス島では、ムバラス島内における自然保護活動も会社の重要な活動方針と位置づけ、自然環境保護活動として、マングローブの植林をはじめとする緑化や海洋でのサンゴの保護、海藻の繁殖、希少種であるオスプレイ(みさご)の保護など幅広い環境保護活動を積極的に行っています。       

写真 植林したマングローブ
植林したマングローブ
写真 サンゴの養殖
サンゴの養殖
写真 海草の繁殖
海草の繁殖
写真 みさご オスプレイ
みさご(オスプレイ)

マングローブ植林活動

コスモエネルギー開発のグループ会社であるアブダビ石油では、ムバラス島で35年以上継続して、マングローブの植林活動を行っています。

育苗施設から50万本以上のマングローブの苗木を移植し、アラブ首長国連邦の厳しい気候や地形条件のもと、人口水路の水深を調整・土壌改良等を行うことで、マングローブが育ちやすい環境を整備しました。

具体的には、海岸沿いの護岸堤防沿いに人工的な水路を掘りマングローブを移植することで、従来の人工的な構造物に自然を活用した防波堤として機能させ、波による海岸の浸食を予防する革新的な活動を行っています。

 

これまでに約7 kmの海岸線、堤防沿いの約20%でマングローブの成長が確認されており、将来的にはさらに9 kmにわたる新規植栽を計画しています。

人工水路に植えられたマングローブ
人工水路に植えられたマングローブ

人工水路に植えられたマングローブ

マングローブの植林効果

マングローブの植林効果

🌍 気候変動緩和(年間約37トンのCO₂吸収)

マングローブは、同じ広さの陸上の森に比べて3~5倍の炭素を貯める力があります。

ムバラス島に作られた17.5ヘクタールのマングローブ林では、年間約37トンのCO₂(2022年時点)を吸収・貯留しています。

 

🛡 海岸浸食抑制と海岸付近のインフラ保全(維持管理費 1/6)

海岸沿いに築いた堤防と保護堤の間にマングローブを植林する「自然と共生する工法(Engineering With Nature)」を採用*1。従来の工学的手法は、維持管理費が必要であり、耐用年数も限られます。一方、マングロープ植林はこれらの課題を軽減し、コスト面では従来工法の約6分の1に抑えられます。

*1:Engineering With Nature(EWN)https://ewn.erdc.dren.mil/

 

🐦 生態系保全(60種超の生物定着)

植えられたマングローブ林には、60種類以上の鳥やカニ、魚などが住みつき、豊かな生態系が生まれています。環境保全だけでなく、生態系保全の観点でも大きな成果を上げています。

生態系保全調査

これまで植生のなかったムバラス島において、人工水路の建設とマングローブ植林が動物相の顕著な定着を促進し、高い生物多様性(底生性無脊椎動物の定着、鳥類の多様性)の実現に貢献しています。

底生性無脊椎動物が定着

・カニの巣穴:最大638個/㎡

・巻貝類:最大429個/㎡

底生性無脊椎動物が定着

鳥類の多様性の実現

・確認種数:50種

・繁殖確認:少なくとも6種(マングローブ林内)

・渡り鳥:12種(シギ・チドリ類など)

鳥類の多様性の実現

COSMOエコ基金での生物多様性に関する活動

COSMOエコ基金では、活動テーマに「生物多様性の保全」の項目があり、里山保全活動や生物多様性を体感できる森づくりなどのプロジェクトを支援しています。

 

活動内容については、COSMOエコ基金プロジェクト紹介をご参照ください。

COSMOエコ基金プロジェクト紹介