COSMO

気候変動への対応(TCFD提言への対応)

当社グループは、エネルギー企業として人々の暮らしに安心・安全を提供するとともに、地球環境を守る責任を担っていると自覚し、グループ理念に「私たちは、地球と人間と社会の調和と共生を図り、無限に広がる未来に向けての持続的発展をめざします」と掲げています。

 

近年、世界各地で異常気象が発生し、自然環境が損なわれるなど、気候変動に対する危機感が高まるなか、世界的に脱炭素化の流れが加速し、日本政府も2050年カーボンニュートラルを宣言しました。
当社グループも、気候変動の視点をより一層取り入れた経営計画を策定し実行していくことが、地球や社会、そして私たちの持続的な発展に不可欠であるとの認識から、「2050年カーボンネットゼロ宣言」を行い、2022年5月に「2050年カーボンネットゼロへのロードマップ」を策定、2023年5月にはサプライチェーン全体を含めたロードマップの改定を行いました。

 

2050年カーボンネットゼロへのロードマップ

 

2050年カーボンネットゼロへのロードマップの策定は、当社グループの最重要マテリアリティの一つとして特定した「気候変動対策」に対応するものであり、TCFDにおけるシナリオ分析や外部環境・内部環境の分析を実施し、ロードマップに反映させております。

最重要マテリアリティである気候変動対策のあるべき姿(GHG排出量が適切に管理されている状態、2050年カーボンネットゼロ達成に向けて進捗している状態)とそのKPI目標に基づき連結中期経営計画において取り組みを推進するとともに、長期ビジョンも更新してまいります。

気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への対応

当社は、2020年12月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明いたしました。株主・投資家をはじめ幅広いステークホルダーと良好なコミュニケーションがとれるよう、TCFD提言のフレームワークに基づき、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の推奨開示項目ごとに、気候変動に対する考え方を整理しています。

 

また、当社は気候変動対策を加速させるために、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」ごとに取り組みを定め、継続的にレベルアップを図っています。

気候変動関連に対するガバナンス

当社グループでは、グループ理念の「持続的発展」を実現するために、気候変動を含む地球環境問題を重要課題の一つと認識しています。また、サステナビリティの基本的な考え方に「地球環境との調和と共生」を掲げ、気候変動の緩和に資するエネルギー企業グループをめざしています。このため、地球環境保全に積極的かつ継続的に取り組むことを「企業行動指針の第4章:地球環境を大切にします」に示し、環境と調和した事業活動の推進を行うために「環境方針」を定めています。

コスモエネルギーグループ企業行動指針

グループ環境方針

取締役会による監視(監督)体制と経営者の役割

気候変動に関するガバナンスは、サステナビリティ課題全般のガバナンスに組み込まれています。

 

サステナビリティ戦略会議での議題や取締役会への報告については、サステナビリティ経営の推進体制をご参照ください。

サステナビリティ経営の推進体制

 

 

サステナビリティ戦略会議において、気候変動関連の課題を含む重要な業務や方針に関する事項の審議を行い、グループ全体に大きな影響があると判断された事項ついては、取締役会に付議・報告することで、取締役会の監督が適切に図られる体制としています。

 

気候変動関連の議題として、2050年カーボンネットゼロロードマップの見直しなど、気候変動問題に関する対応方針、GHG削減の計画策定、指標などの審議および決定を行っています。また、グループ全体の事業活動から生じる環境負荷を最小化させる環境保全活動(リスク低減施策)およびビジネス機会の認識・創出を実施しています。

2023年度は、気候変動対策への取り組みとして、CO2排出削減策の進捗について、半期ごとにモニタリングを実施し、取締役会に報告を行いました。
サステナビリティ戦略会議において審議および決定された内容は、必要に応じ構成員が担当する部署へ周知するとともに、事務局がサステナビリティ連絡会にて、グループ会社に連絡・報告しています。

気候変動関連のリスク・機会のビジネスへの影響

当社グループは、2050年カーボンネットゼロ社会の実現に向け、社会と当社グループの持続的な発展と中長期的な企業価値に影響を与える重要なESG課題(マテリアリティ)を特定しています。気候変動に関連するマテリアリティとして、持続的な価値創造のためのマテリアリティである「気候変動対策」「クリーンなエネルギー・製品・サービスの提供」「収益基盤事業の構造改革」を特定して取り組むとともに、事業継続のための基盤となるマテリアリティとして、「グループリスクマネジメントの強化」にも取り組んでいます。

 

第7次連結中期経営計画のスローガン『Oil & New ~Next Stage~』を達成するためにも、風力発電事業の拡大やGHG排出量削減など、気候変動関連のリスクと機会の視点を取り入れながら気候変動対策の取り組みを積極的に推進しています。      

短期・中期・長期の気候変動関連のリスク・機会とビジネスへの影響

当社グループでは、事業活動において想定しうる気候変動リスクと機会について、外部環境による事業環境の変化を想定し、TCFD提言に示されている気候変動リスク項目に基づき重要度を検討しています。
当社グループが想定するリスクと機会の主な項目と影響は以下のとおりです。

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【対象範囲】 石油開発、石油精製/販売、電力(再エネ・IPP)、石油化学
【発生時期(短・中・長期)の考え方】 短期:1年以内、中期:1~5年以内、長期:5年~20年
【発生時の影響度】 小:10億円未満、中:10億円以上~100億円未満、大:100億円以上      

気候変動におけるシナリオ分析、戦略のレジリエンス

■気候変動シナリオの選択(シナリオ設定の考え方)

TCFD 提言では、2℃以下シナリオを含む複数の温度帯におけるシナリオに基づく検討を求めています。シナリオ分析では、石油事業、石油化学事業、石油開発事業を対象事業とし、2030年、2040年、2050年の事業影響を想定しました。


シナリオとして、4℃シナリオ(成り行き)、1.5℃シナリオ(より低炭素移行)の2つのシナリオの温度帯での世界観について、1.5℃シナリオにおいては、国際的に多くの企業が採用している国際エネルギー機関(IEA)のNZE、APSシナリオを選択し、4℃シナリオにおいては、STEPSシナリオを選択し、IEAシナリオに不足する物理リスクの自然災害等の想定は、IPCCのRCP8.5、RCP6.0、RCP2.6や国内外の政府等のシナリオを参考としました。

 

シナリオ分析のための事業に影響を与える重要なパラメーターとして、石油製品需要、炭素価格、災害発生率などを用い、2030年、2040年、2050年の各シナリオによる財務影響の評価検討を進めています。

フローとしては、以下のとおりです。

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前述の2つで想定したシナリオの世界観は次のとおりです。

 

【4℃シナリオの世界観】

 4℃シナリオでは、石油事業はグローバルで増加が見込まれる一方、気候変動に起因する異常気象が頻発・激甚化し、風水害による装置や機器故障による損失、保険料の増加によるコストの増加が発生する恐れがあることが予想されます。

シナリオに基づく世界観

【1.5℃シナリオの世界観】

 

1.5℃シナリオでは、脱炭素化が大きく推進されます。カーボンプライシングや排出取引価格が高額化することから石油需要の減少も加速することが予想され、事業における排出削減やポートフォリオの見直しの必要性が高まることが認識されました。再生可能エネルギー電力事業において優位性を保つことができれば、売上を増加させる機会を獲得できることも認識され、エネルギー企業の事業ポートフォリオの変換が進み、太陽光、風力、水力、その他の再生可能エネルギー市場の更なる開拓が必要とされています。

シナリオに基づく世界観

気候変動シナリオによる財務影響評価

シナリオ分析に基づき、4℃、および1.5℃シナリオにおける財務影響評価を行いました。以下の前提条件による試算の結果は次の通りです。

 

4℃シナリオについては、4℃の世界観に基づき、自然災害による物理リスク、需要減による移行リスクについて試算し、1.5シナリオについては、1.5℃の世界観に基づき、需要減および炭素価格の移行リスクについて試算を行いました。

気候変動シナリオによる財務影響評価

【主要なリスクへの対応策および機会の取り込み】

シナリオ分析の結果について、サステナビリティ戦略会議で審議を行い、2050年カーボンネットゼロの達成に向けたロードマップ策定の見直しや気候変動対策と経営戦略の統合に向けた体制整備を第7次中計に反映しております。

 

今回のシナリオ分析では、主力事業である石油事業・石油化学事業・石油開発事業を対象範囲とし、2030年、2040年、2050年の断面で財務影響評価を実施しました。

気候変動リスクに対する機会側面として、当社は「Vision2030」において「グリーン電力サプライチェーンの強化」「次世代エネルギー拡大」を掲げています。今後の長期ビジョンの策定など事業計画においても、グリーン電力サプライチェーン、および次世代エネルギーを中心としたNew領域への投資を拡大させる計画としており、機会面のインパクト拡大に取り組む予定です。

 

今後は、最新のシナリオを参考にした分析や機会の収益見通しを反映させる等の検討を行い、定期的にサステナビリティ戦略会議で報告する等、TCFD提言に沿った開示と経営戦略と一体化した体制の構築を継続的に実施していきます。

気候変動関連のリスク管理

識別・評価・管理するプロセス、統合的リスク管理

当社グループは「グループリスクマネジメントの強化」をマテリアリティの一つと位置付け、事業活動を通じて発生する一切のリスクを把握し、様々なリスクを適切に管理し損失の極小化を図る体制を整備し、計画・実践・評価・是正措置のサイクルを通じてリスクマネジメントの充実に努めています。

 

当社グループのリスクマネジメントについては、リスクマネジメントをご参照ください。

 

気候変動に関するリスクについては、グループ全社にまたがる重要な経営課題として、サステナビリティ戦略会議において継続的に議論を行う体制を整え、リスクの把握と対応状況の評価等を実施しています。

気候変動関連の指標と目標

当社グループは、2021年に「2050年カーボンネットゼロ」を宣言し、「グループの事業活動から排出する温室効果ガス(Scope1およびScope2)を2050年までにネットゼロにする」目標を掲げ、2022年にその実現に向けた取り組みと工程をとりまとめたロードマップを策定しています。

さらには、第7次中期経営計画(2023年~2025年)の発表に際し、カーボンネットゼロの対象をサプライチェーンまで拡大し、Scope3も含むカーボンネットゼロをめざすと宣言し、GHG排出削減への取り組みと実現に向けた検討を進めています。

 

第7次中計期間においては、Vision2030において、Scope1,2の排出量を削減貢献量でのマイナス分も含めて、▲30%(200万tCO2)削減(2013年度比)する目標を掲げています。

リスク・機会の評価指標

気候変動に対する機会・リスクへの対応の一環として、マテリアリティのうち第7次中計期間は、以下の指標と目標を定めています。

2023年度 気候変動関連マテリアリティに関するKPIの目標と実績

※バイオETBEとは、ガソリンに混合しているバイオエタノールを原料として合成される燃料

 

Scope1、2、3のGHG排出量と実績

2023年度のScope1は、6,886tCO2(前年比6%減少)、Scope2は226千tCO2(前年比8%減少)となり、Scope1,2の合計値は7,112千tCO2(前年比6%削減)となりました。

省エネ活動の推進や装置稼働率の減少等によりScope1,2の削減量は、前年比419千tCO2(2013年度比で951千tCO2)の削減となりました。
2030年のGHG排出削減目標の30%削減目標に対し、削減貢献量を含めたScope1,2の排出量は、6,629千tCO2で、2013年度比15%削減となりました。

 

GHG排出量(Scope1,2)と削減貢献量 (単位:千tCO2)
  2013年度 2022年度 2023年度
Scope1 7,740 7,287 6,886
Scope2 323 244 226
Scope1,2排出量 合計 8,063 7,531 7,112
バイオ燃料(バイオETBE混合)※1 -74 -193 -207
風力発電拡大※2 -160 -244 -276
削減貢献込みの排出量 合計 7,829 7,094 6,629
2013年度比削減量 9% 15%

※1) バイオ燃料(ETBE混合): バイオETBE配合ガソリンによるCO2削減貢献量をマイナスのCO2として算定

※2) 風力発電拡大: 総発電量×各年度の代替値によりCO2削減貢献量をマイナスのCO2排出量として算定

 

Scope3については、これまでの集計範囲を拡大し、関係する全てのカテゴリー(1~7,9,11~13)について集計しています。Scope3の合計値は、76,047千tCO2でした。

 

詳細な実績値は、ESGデータ集でご確認いただけます。

GHG排出量(Scope1,2,3)