当社グループは、リスクマネジメントをマテリアリティの一つと位置付け、事業活動を通じて発生するリスクを把握の上、適切な管理体制を整備し、計画・実践・評価・是正措置のサイクルを構築しています。
また、当社グループを取り巻く事業環境の変化や様々なリスクに対し、より適切に対応するため、中長期の視点を持つとともに、リスクを事業機会として捉え、企業価値を最大化しようとする全社的リスクマネジメント (ERM:Enterprise Risk Management)を構築しています。リスク抽出においては、経営によるトップダウン型のアプローチ手法を導入するとともに、リスク管理においてはリスクオーナー設定によるリスクカテゴリ毎のグループ横断的なリスク管理を推進しています。
(1)リスク管理体制
当社グループでは、各社の事業を発展的かつ安全に運営するため、グループリスクマネジメント統括部署(サステナビリティ推進部)が各社におけるリスクへの取り組み状況を集約し、サステナビリティ戦略委員会に報告します。サステナビリティ戦略委員会では、グループ全体に関わるリスクへの対策と進捗を審議し、その結果を経営執行会議、取締役会へ報告するとともに、サステナビリティ連絡会を通じて各社へ展開します。
また、サステナビリティ戦略委員会の実務機能を担う機関として、サステナビリティ推進部長を事務局長とするサステナビリティコミッティを必要に応じて開催しています。
サステナビリティ戦略委員会のガバナンス体制図は、サステナブル経営の推進体制をご参照ください。
(2)リスク管理の運営
経営層へのヒアリング・アンケートによりトップダウンで抽出した中長期的リスク及び各部門・グループ各社がボトムアップで抽出したリスクのうち、影響度や発生可能性が上位かつ、マテリアリティとの関連性や業界特性上の重要性が高いリスクを選定しました。これらのリスクについて、経営層がサステナビリティ戦略会議(2025年度からはサステナビリティ戦略委員会)において議論し、2024年4月に11項目をトップリスクとして決定し、取締役会へ報告しました。
2025年度はその11項目を継続しつつ、直近の社内外の環境変化が当社グループに与えうる事象・影響をリスクシナリオに織り込み、対策の強化に取り組んでいます。
トップリスクについては、グループ横断的に統制を図るため、当社グループ全体におけるグループリスクオーナーと、中核事業会社におけるリスクオーナーを設定しています。
グループリスクオーナーであるグループ全体の統括責任者が、トップリスクへの対策の策定並びにKPIの設定を実施した上でモニタリング・レビューを行い、更なる改善活動に繋げます。中核事業会社のリスクオーナーはグループリスクオーナーとの連携のもと、各社において同様のPDCAサイクルを実践します。
また、トップリスクに含まれない、各部門・グループ各社から抽出したリスクについても、全社的リスクマネジメントの中で管理しております。
当社ERMにおけるPDCAサイクル

(3)トップリスク
トップリスクは、以下に記載のとおりです。トップリスクについては「(2)リスク管理の運営」に記載のとおり決定し、管理します。
No. | トップリスク | カテゴリ | マテリアリティとの関連 | 想定されるシナリオ・主な対策 |
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1 | 脱炭素化の進展による石油需要の減少・事業資産への影響 | 戦略 | ○ | (シナリオ)エネルギートランジションの進行等により、想定外のスピードでの石油製品需要減少、GX-ETSや炭素賦課金によるコスト増に伴い、収益性が低下し、当社グループの事業資産が座礁化する (対策)中長期的な事業環境の変化を適切に捉え、将来の環境を見据えて事業方向性を検討 |
2 | 環境規制・気候変動対策の強化に伴うポートフォリオ・戦略投資への影響 | 戦略 | ○ | (シナリオ)エネルギー政策や規制変更等により気候変動対策が急激に強化され、ポートフォリオ転換・戦略投資の判断に影響を及ぼす (対策)中長期的な事業環境の変化を適切に捉え、将来の環境に応じた適切なポートフォリオ・事業戦略を構築 |
3 | 労働市場の変化による人材確保・育成の困難化 | 戦略 | ○ | (シナリオ)労働人口が減少する中で、既存・新規事業の両面で多様性かつ専門性を持った人材の確保・育成が困難になる (対策)経営人材の確保、事業戦略に合わせた人材の確保 |
4 | カーボンニュートラル燃料への対応遅れ | 戦略 | ○ | (シナリオ)カーボンニュートラル燃料に関して、上市されている当該燃料の調達が困難となる、あるいは新しい技術開発・導入が遅れる、または失敗することにより、対応が遅れる (対策)業界・政策動向のモニタリング、技術検討 |
5 | 原料・資材価格の変動 | 戦略 | (シナリオ)政情変化や経済変化、各国の政策変更等に伴う原油やLNG等の資源価格のボラティリティ上昇や、世界的な保護主義政策やインフレ(資機材、労務費等の高騰含む)、為替レートの変動により、業績が悪化する (対策)業界・政策動向、産油国動向のモニタリング、調達体制の最適化 | |
6 | 自然災害 | 戦略 | ○ | (シナリオ)地震や津波等の大規模自然災害により当社設備が壊滅的な被害を受け、早期復旧が困難となり巨額の損失を被る (対策)当社グループ全体での災害対策の構築 |
7 | 品質不正 | 業務 | ○ | (シナリオ)品質管理の不備と自浄作用の欠如により、出荷後に品質に関する問題が発覚し、製品回収等により損失、ステークホルダーからの信用失墜を招く (対策)品質監査の実施、品質管理システムの高度化検討 |
8 | サプライチェーンの中断 | 業務 | ○ | (シナリオ)当社グループのサプライチェーンは広範囲に及ぶため、政治情勢の悪化や取引先における様々な要因により、原油生産拠点での操業停止、船舶輸送、製油所の整備や給油所の運営等において、サプライチェーンの中断、損失が発生する (対策)運送体制強化、調達体制の最適化 |
9 | 情報セキュリティリスク | 業務 | ○ | (シナリオ)サイバー攻撃により業務停止や情報漏洩、身代金請求等の被害が発生する 顧客情報管理の委託先に対する指導・監査を適切に行うことができず、個人情報が流出し、顧客からの信頼を失う (対策)ランサムウェアやウイルス対策の強化、個人情報保護等の対策強化 |
10 | 生産設備における事故、不具合・故障 | 業務 | ○ | (シナリオ)製油所・油田・発電所での事故や不具合・故障により、操業継続が困難となるほか、周辺地域の自然環境・生物に影響を及ぼす等損失が発生し、キャッシュ・フロー創出に影響する (対策)不具合の未然防止(APM(注1)の構築等)及び減災対策の強化、老朽化対策 |
11 | 内部統制不備による不正/不適切行為の発生 | 財務・コンプライアンス | ○ | (シナリオ)内部統制システムが十分に機能せず、人員・ノウハウやIT技術導入不足等により重大な不備や不正が発生し、行政指導や刑事罰を受けるほか、ステークホルダーからの信用を失う 企業の価値・競争力の源泉となる情報資産が社外へ漏えいすることで、企業価値・競争力が毀損される (対策)CSA(注2)の実施、グループガバナンス強化、知的財産管理強化 |